イノベーションしていますか

著名な経営学者であるP.F.ドラッカーは、企業が成長発展し続けるための基本的機能として、「マーケティング」と「イノベーション」を挙げています。
ここでは昨年12月に文部科学省から発表された調査結果(※)から、企業のイノベーションへの取組状況をみていきます。

イノベーション実現企業は40%

上記調査結果から、平成24年度から26年度の間に、イノベーションを実現させた企業の割合をまとめると、表1のとおりです。

製品やサービス、その製造や提供プロセスの改善をはじめ、イノベーションには様々な取組がありますが、実現できた割合は40%となりました。
イノベーションの類型別にみると、企業の規模に関係なく組織イノベーションの実現割合が高くなっています。

能力のある従業者の不足が問題に

次に、イノベーションの阻害要因や活動非実施の理由として高い割合の上位5つを、企業の規模別にまとめると表2のとおりです。

すべての規模で、能力のある従業者の不足の割合が最も高くなりました。
2番目、3番目の理由は、いずれも目先の売上・利益の追求、良いアイデアの不足ですが、中小規模の企業では、技術力やノウハウの限界という理由も上位に入っています。

企業が市場に適合し存続していくためには、イノベーション活動が不可欠です。
加えてイノベーションを実現させるために、教育訓練の実施による従業員の能力向上はもちろん、他社との協力などにも取り組んでいくことが重要です。
(※)文部科学省「第4回全国イノベーション調査統計報告」
文部科学省科学技術・学術政策研究所が、常用雇用者数10人以上の民間企業約40万社を対象に標本抽出した約25,000社
を対象に実施した調査で、有効回答率は50%です。

ここでのイノベーションとは、新しいまたは大幅に改善されたプロダクト(製品またはサービス)またはプロセスの導入、マーケティングに関する新しい方法の導入、もしくは業務慣行、職場組織または外部関係に関する新しい組織の方法の導入をいいます。また、小規模企業は常用雇用者数10人以上49人以下、中規模企業は同50人以上249人以下、大規模企業は同250人以上の企業群をいいます。詳細は次のURLのページから確認いただけます。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/12/1380031.htm

企業のICT投資の現状

人材不足問題への対応策として、既存の従業員の生産性向上があります。
生産性向上の方法のひとつにICT化による業務の効率化がありますが、ICTに対する投資はどの程度行われているのでしょうか。
ここでは総務省の情報通信白書のデータ(※)から、企業のICT投資の現状をみていきます。

ICT投資は投資全体の10%未満

上記白書から、従業員規模別に企業の投資に占めるICT投資の割合をみると、表1のとおりです。
全体では10%未満の割合が40%近くを占めました。
従業員規模別でも、10%未満の割合が最も高くなっています。
なお、ICT投資比率は全体で9.2%となりました。
一方、現在ICT投資をしておらず、今後も投資する計画はない割合が、100~300人未満で30%を超えました。

ICT投資比率は6~9%の業種が多い

業種別の投資に占めるICT投資の割合は、表2のとおり10%未満の割合が最も高くなっています。
特に、製造業やエネルギー・インフラ業では、その割合が40%を超えています。
ICT投資比率は情報通信業が15%を超えましたが、他の業種は6~9%台となりました。
その他、今後も投資する計画はない割合が30%を超える業種もあります。
業種や規模などによってICT投資の種類や金額は異なりますが、あらかじめ求める効果を明らかにするのはもちろん、最大の効果が出せるように、投資後の状況も管理していくことが大切です。

(※)総務省「平成28年版情報通信白書」
28年8月に公開された白書です。ここで紹介したデータは、白書10~12ページ掲載の企業向けアンケート調査によるものです。
ここでのICT投資には、ハードウェア・ソフトウェア・ICTサービス・その他が含まれます。詳細は次のURLのページから確認できます。
なお、表中の()内の数字は回答数になります。
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/h28.html

ICTを活用した 新商品・サービスへの取組状況

国内市場が縮小していく中で、新しい取組を始める企業は少なくありません。
ここでは企業のICTを活用した新たな商品・サービスの提供・販売状況をみていきます。

小売・流通分野の割合が高い

総務省の平成28年版情報通信白書(※)から、企業のICTを活用した新たな商品・サービス(以下、新商品等)の提供・販売(以下、提供等)状況と今後の意向についてまとめると、表1のとおりです。

現況では、小売・流通分野で新商品等の提供等をしている企業の割合が高くなっています。
次いで、環境・インフラ、金融・保険分野の割合が高くなっています。
今後5年の意向をみると、すべての分野で現在よりも割合が高くなりました。
企業のICTを活用した新商品等の提供等への取組意欲が感じられます。

業種別の状況

次に業種別に、ICTを活用した新商品等の提供等を行う企業割合の高い分野をまとめると、表2のとおりです。

製造業と商業・流通業では、小売・流通分野の割合が最も高くなりました。
エネルギー・インフラ業と情報通信業は環境・インフラ分野が、サービス業では、教育と医療・健康分野の割合が最も高くなりました。

新たな取組を検討している企業は、ここで取り上げたような分野やキーワードなども、材料のひとつにされてはいかがでしょうか。

事業承継の準備状況

平成28年12月5日に中小企業庁より「事業承継ガイドライン」(以下、ガイドライン(※))が発表されました。
ここではその結果から、企業の事業承継の準備状況に関するデータをご紹介します。

70歳代でも準備済みは50%以下

数年後には団塊世代の経営者の年齢が70歳代を超え、多くの企業で事業承継の問題が現実的なものとなってきます。上記ガイドラインから、経営者の事業承継の準備状況をみると表1のとおりです。

既に準備をしている割合は、70歳代の経営者が49.5%と最も高くなりました。
次いで、80歳代以上が47.7%となりましたが、いずれも50%に満たない結果になっています

事業承継の準備内容は

次に事業承継の準備内容をみると表2のとおりです。
後継者を決定した割合が56.0%となりました。
ただし、経営者が保有している株式や資産の整理・移転、関係者との調整などを行っている割合は、50%未満となってい
ます。また後継者が決定したら、経営者としての教育等も必要になります。このように、事業承継はすぐにできるものではなく、早めに準備することが重要です。

ガイドラインで確認を

ガイドラインでは、早期の計画的な事業承継の取組を促進するため、60歳を準備着手の目安としています。
そして、事業承継に向けた以下5つのステップの進め方や、事業承継の手法などを紹介しています。

1.事業承継への準備の必要性認識
2.経営状況等の把握
3.経営改善
4.事業承継計画策定・マッチング実施
5.事業承継の実行

その他、事業承継診断表や事業承継計画の様式例も紹介しています。
今後、事業承継を考える経営者はもちろん、現在準備中の方もガイドラインを確認し、自社で参考になる部分を取り入れてみてはいかがでしょうか。

(※)中小企業庁「事業承継ガイドライン」
中小企業庁が10年ぶりに見直しを行い発表した資料です。表中の()内の数字は回答者数です。詳細は次のURLのペー
ジから確認いただけます。http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2016/161205shoukei.htm

最高120万円が支給される 65歳超雇用推進助成金

例年、雇用関係の助成金の大幅な改正は4月に行われますが、今年度は9月から開かれていた臨時国会において、助成金に関する補正予算が組まれたことを受け、助成金の新設・見直しが行われました。今回はその中から中小企業を中心に活用が期待される、65歳超雇用推進助成金についてとり上げましょう。

現状の定年年齢の定め

最近は深刻な人材不足の状況となっていますが、特に中小企業においては実質的に全従業員が65歳まで雇用されているような状態が多いのではないかと思います。
今回の助成金を活用して定年年齢の引上げを検討される場合は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の都道府県支部にお尋ねください。
高年齢者雇用安定法に基づき、65歳未満の定年を定めている企業においては、従業員本人が希望すれば原則として65歳まで継続して働くことのできる仕組みの導入が義務付けられています。
厚生労働省が実施した「平成27年就労条件総合調査」の結果によると、定年を定めている企業は92.6%であり、一律定年制を定めている企業のうち、定年年齢が60歳である企業が80.5%、65歳である企業が16.1%となっています。まだまだ多くの会社
が60歳定年としつつ、再雇用制度等により65歳まで働ける仕組みとしています。

支給対象となる事業主の主な要件

この現状を踏まえ、今回の助成金では、平成28年10月19日以降に、労働協約または就業規則に、次の①から③までのいずれかに該当する新しい制度を定め、実施した事業主に対し、その内容に応じた助成金が支給されます。

対象となる企業の要件は、①から③の制度を規定する際に経費を要した事業主であり、支給申請日の前日において、1年以上継続して雇用している60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いることとなっています。
この他にも細かな要件がありますので、申請を検討される場合には必ず事前にご確認ください。

①旧定年年齢を上回る65歳以上への定年引上げ
②定年の定めの廃止
③旧定年年齢および継続雇用年齢を上回る66歳以上の継続雇用制度の導入

支給される助成金額

助成金額は、導入する制度に応じてそれぞれ次の金額となり、一時金として支給されます。

65歳への定年引上げ100万円
66歳以上への定年引上げまたは
定年の定めの廃⽌120万円
希望者全員を66歳から69歳ま
で継続雇⽤する制度の導⼊60万円
希望者全員を70歳以上まで継
続雇⽤する制度の導⼊80万円

なお、定年引上げと継続雇用制度の導入を合わせて実施した場合でも、助成金額は定年引上げを実施した際の金額となります。

最近は深刻な人材不足の状況となっていますが、特に中小企業においては実質的に全従
業員が65歳まで雇用されているような状態が多いのではないかと思います。今回の助成金
を活用して定年年齢の引上げを検討される場合は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用
支援機構の都道府県支部にお尋ねください。